私は今、47歳の男性で、奈良県で暮らしています。
6つ下に弟がいますが、ダウン症です。
昭和49年に弟は誕生しましたが、その当時でも妊娠している時に脳に異常があると言われていました。
母は産むか産まないか迷っていたこともありますが、産むことにしたようです。
父の親せきからは「なぜ、産んだのだ?」と問われたこともありましたが、
母はそれも自分の運命だと受け入れ、弟を愛し、育てました。
見た目も普通の人と違い、どこか遠くを見つめているような表情をすることもありますが、
我が家にとっては掛け替えない家族ではありましたなので、
他人より知恵が遅れていてもしかたないと割り切っていました。
実際に差別を受けたことも過去にありました。
弟を連れて街を歩いていると知らない大人の人から流し眼をされ、
どこか異質に弟を見ていることもしばしばありました。
少し悩んだりもして、同じダウン症を抱えた親御さんにも聞いたことがあります。
「街で知らないひとから異質な目で見られたらどう対処したらよいですか?」
その方は性格がはっきりしている方でした。
「家の子に何か用事があるのですか?」と駆け寄ったりなんかしたそうです。
私にはそんなことはできませんでしたが、世の中にはそう対処している方もおられるんだと感じました。
残念ながら弟が10歳の時に母がガンになり亡くなりました。
まだ50歳の若さでした。
私も学校や仕事があったので、弟の面倒は見れませんでした。
考えた末、弟は奈良市の柳生町という障害者施設に入居することになりました。
入居した際は弟は10代でしたので、家族が入居費用を負担していました。
20歳になってから、障害者年金の手続きをが取れることになって、家族の負担はなくなりました。
平素は離れてくらしていますが、夏と正月前に施設の方より、毎回、ハガキが届きます。
帰省についての内容のハガキです。
こちらの希望した日に帰省することが任意になっています。強制ではありません。
仕事や何らかの事情で帰省できないこともあるので、それは自由です。
施設には今のところ30人以上の方が入居しているそうで、
親が高齢になったり、亡くなられた親御さんもあると聞きました。
兄弟が迎えにきて帰省をしているのは私だけだと、施設の寮長さんは言っておられました。
事情は分かりませんが兄弟が家で、障害のある人の面倒は、やっぱり無理なのかなあと考えたりもします。
テレビでは障害者を扱った番組を過去に何度もみました。
その画面に出てくる障害者の方たちは親の愛情を受けている人ばかり。
そういう方たちは自分たちがテレビに出ることによって、
社会が少しでもよくなるように努力している人ばかりです。
利他愛にあふれた人ばかりですが、施設では親が育児放棄した障害者さんや
親御さんが亡くなった方もおられるので、
社会の方はテレビには映らない障害者の方たちにも目を向けて欲しいです。