仕事中の事故、無いにこしたことはないですが、現実には発生しています。
例えば構内で作業中に機械に手を挟まれて手を切断してしまうことだってあるわけです。
こういった仕事中のアクシデントに備えての保険が「労災保険」であり、
負傷・疾病から障害、死亡その他に至るまで、
対応する保険給付(医療サービスなどの現物支給や現金の支給)を行っています。
仕事中に機械に手を挟まれて手を切断というアクシデントに対しては、
治療費の支給や休業補償も実施されますが、
手は治療をいくら施しても元の状態にはならないため、
治癒(治療の効果が期待できない状態、症状の固定化)に対応した障害給付が中心となります。
障害給付の内容は大きく2本、障害状態の重い1級から7級までが年金という形で、
比較的状態の軽い8級から14級までが一時金という形で支給されます。
どういう状態が障害等級何級なのかは別途定めがあり、
例えば両上肢をひじ関節以上を失ってしまった場合、障害等級でいうと1級になり、
障害補償年金1級として1年間で、
給付基礎日額(労働者個人単位で算出される3か月あたりの1日分の賃金額、
3か月の賃金総額が90万円の人は1万円というイメージ)
の313日分が支給されることになります。
障害補償年金が生涯支給されるかというと、
障害によっては再発(治癒前の状態に戻ること)の可能性もあり、
再発になると障害補償年金は受ける権利が消滅することになります。
また例えば仕事中のアクシデントにより軽い火傷にあい痕が残ってしまった場合は、
障害補償一時金(障害等級8級~14級に対応)という形で、
給付基礎日額の503日分(8級)~56日(14級)を1回に限り支給を受けることになります。
なお、従来は火傷の痕の障害については、
女性労働者の方が、男性労働者よりも障害等級が高くなっていましたが、
現在は男女差はなくなっています。
労災保険の手続き先・相談先は会社を管轄している労働基準監督署になるため、
障害等級が何級になるかの判断も労働基準監督署の判断にかかってきますので、
年金になるのか一時金になるのか、特に補償の問題で心配のある場合は、
労働基準監督署まで相談の上、確認していくといいと思います。
仕事中のアクシデントに対応するのは「労災保険」、この手続きが完了。
障害等級に対応して障害補償年金又は障害補償一時金を受給、
これでいわゆる補償は終了とはなりません。
アクシデントにあった労働者が
例えば正社員で厚生年金保険に加入(国民年金にも同時加入)していた場合、
実は国民年金の障害基礎年金、厚生年金保険の障害厚生年金も
同時に支給される可能性があることに確認が必要です。
国民年金・厚生年金保険の障害年金はアクシデントの原因が仕事中
又はプライベート中かを問わず、その支給対象としているためです。
障害基礎年金や障害厚生年金についての手続き先・相談先は
年金事務所になりますので、相談の上、確認しておきましょう。
そして実際に障害基礎年金や障害厚生年金も受給できることになった場合には、
もう1点、労災保険の障害給付との重複支給を調整する点に注意することが必要です。
アクシデントが同一(障害の場合は同一傷病)の場合、
原則として労災保険の障害補償年金が減額支給、
国民年金(障害基礎年金)厚生年金保険(障害厚生年金)が全額支給となります。
特に労災保険の給付の方が減額となりますので、
必要な場合は、労働基準監督署まで相談の上、確認しておきましょう。
以上が仕事中のアクシデントに対応した障害給付(年金中心)の内容でしたが、
一番の理想は事故のない安全で衛生的な職場環境の形成になると思います。
万が一に備えての大切な情報として確認して頂きたくお願い致します。