あきらめないこと 歩み続けること

障がい者さんの就労移行支援の仕事で出会った20代後半の女性は

生まれながらの病気で低身長の方でした。

四肢も指も短く歩行にはベビーカーのような歩行器を使っておられました。

歩行器が無くても歩いておられましたが、荷物を持っての移動は難しかったのです。

知的障がいは無かったので大学も出ておられましたし、

自分で自動車運転免許も取得されて、普段は専用に改造されたマイカーで行動されていました。

 

彼女が仕事を辞めてしまった理由はいくつかありますが、この通勤もひとつの原因でした。

車で30分ほどでしたが途中渋滞する箇所があり、毎日のストレスになっていたようです。

 

彼女の悩みは身体障がいそのものよりも二次障がいでもあるうつ病でした。

見た目にはっきりとわかる障がいは心ない言葉の暴力にさらされることも少なくありません。

特に子供たちは無邪気に傷つく言葉を投げかけてきますし、

それを親たちは注意しきれていないのが現状です。

外を歩くといつも他人の視線が痛い、いつもは毅然として気にしないようにと思っていても

心が弱っているときには耐えられない状態が続き、精神を病んでいきました。

 

学生時代にはいつも何人かのクラスメイトが親切に移動を手伝ってくれたり、荷物を持ってくれていました。

感謝しつつもその状態に慣れてしまった頃にちょっとした仕草に

自分の存在が迷惑だということを敏感に悟って過大解釈してしまい、

ますます鬱に流れていったようです。

どんどん恋をして、だんだん結婚する友人も出てくる頃には

自分は恋愛の対象ではないという悲観からますます暗い方に心が向いていきました。

出会い系サイトで恋のまねごとを楽しんでも会うことはできませんでした。

 

そんな彼女を救ったのはやはり彼女の可能性を信じて励まし続けたお母さんの存在でした。

大学を出てすぐに勤めた企業は障がい者雇用に理解のある職場でバリアフリーでもありましたが、

仕事のスピードが彼女の能力を超えていました。

説明される作業の内容が頭に入らないまま質問もできずににとりあえず始めて失敗を繰り返しました。

残業すれば仕事を溜めることもなかったのですがご本人にはその気はありません。

残業すればますます車の渋滞に巻き込まれます。

休日出勤なんて考えられませんでした。

平日会社に通うだけでクタクタだったのです。

 

この繰り返しで最初は温かい目見ていた上司や同僚もだんだんと対応が変わり、

社内での彼女の評価は下がり、1年もしないうちに退職することになってしまいました。

どこが悪かったのでしょうか。彼女は一生懸命でした。

ただ時間内だけで働きたかっただけです。

でも一般企業で働くにはそれでは済まされないことも事実です。

 

そもそも彼女に与えられた仕事は彼女の特性を理解したものだったでしょうか。

身体障がいの方は身体だけが問題ではないということに

企業側も目を向けていただくことが必要になってきています。

障がい者雇用担当者が福祉のプロだというケースもまれです。

 

就労移行支援サービスでジョブコーチという制度があります。

企業と利用者との橋渡しになる存在です。

個々の特性にあわせて、できることできないことを企業側に伝え、

逆に企業が求めることをどのように実践していくかを、

当事者と一緒にマニュアルを作ったり、仕事の進め方を考えたりもします。

仕事でどこが困っているかの相談もできます。

一人で頑張りすぎずにこんな公的サービスを利用することも解決につながるかもしれません。

 

あきらめないこと、歩み続けること、幸せの形は色々でそれは他の人とは違うかもしれないけど、

いつか見つかります。

彼女もまた再チャレンジを始めました。

好きなタレントのファンミーティングにも車で出かけているようです。

少しずつ春が近づいているような気配を感じています。



身体障害者手帳 関連記事


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメント

お名前 *

ウェブサイトURL