盲導犬の一生

友人が初めて盲導犬を連れてきたのは、もう随分前の話になります。

それからは、友人に会う度にパートナーである盲導犬も一緒でした。

そして先日、そのパートナーが引退したことを聞かされました。

犬が少々苦手な私ですが、友人のパートナーには感心したものです。

 

ある時、友人とレストランに入ると、店員さんが私にだけこっそりこんなことを言いました。

「あのワンちゃん、おとなしいんですね。最初に見た時は、お荷物かと思った位ですよ」と。

 

友人がパートナーに話しかける時の、あのやさしい声のトーンが忘れられません。

普段私には決して使わないあんな優しい声は、パートナーである彼しか向けられないと思ったほどです。

人と犬との信頼関係なんてよくいいますが、友人とパートナーのその関係は、

私などが言葉で表せない程の心の奥底からの繋がりの様なものがあると感じました。

 

出会いがあれば、別れもあるのが盲導犬です。

彼らの一生を、簡単に追ってみました。

 

盲導犬は、産まれながらにして盲導犬ではありません。

盲導犬としての素質がある両親から産まれますが、最初は盲導犬の候補犬でしかありません。

産まれてから二ヶ月間は、母親や兄弟と共に暮らします。

二ヶ月が過ぎると、親元を離れてパピーウォーカーと生活するようになります。

パピーウォーカーとは、盲導犬の候補犬を育てるボランティアのことです。

ここで、一歳になるまで過ごします。

 

パピーウォーカーの家族の一員として、色々なことを経験します。

街の様子や車や電車の音、たくさんの人と関わることなどを覚えていきます。

愛情たっぷりに育てられ、社会を見たり人との信頼関係をつくったりする期間です。

 

パピーウォーカーの元を離れると、いよいよ盲導犬になるための訓練が始まります。

盲導犬を育てる施設で、盲導犬訓練士と一緒に勉強します。

まず教わるのが、「Good」という言葉。

相手がして欲しいことをできた時、Goodと言って褒めてもらえるんです。

厳しくではなく楽しく、訓練が進んでいくのだとか。

 

「Sit(座れ)」、「Wait(待て)」などの言葉を覚えたら、いよいよ街へ校外授業です。

障害物を避けたり、角や段差を教えたり、電車やバスに乗ったりと、

視覚障害者を安全に導けるよう、実践的な訓練が行われていきます。

 

訓練を一通り終えた候補犬たちは、いよいよ盲導犬になれるかどうかの試験を受けることになります。

試験は三段階あり、全てに合格した候補犬だけが、盲導犬としての道を歩むことができます。

 

盲導犬候補の中から実際に盲導犬になれるのは、全体の3~4割程度。

盲導犬になれなかった犬たちには、別の道がきちんと用意されています。

晴れて盲導犬となっても、すぐにユーザーと共に歩けるわけではありません。

マッチングによって引き合わされた盲導犬とユーザーが、パートナーになるための訓練を受けます。

 

施設に泊り込みで四週間、家に帰ってからも訓練士がサポートして訓練は行われます。

一緒に街を歩くことはもちろん、盲導犬の健康管理や食事・排泄・シャンプーなどのお世話まで、

ユーザーは盲導犬に関する知識と実践を学びます。

これらが全てクリアできてから数年間、パートナーとして一緒に過ごすことになるんです。

 

盲導犬は十歳あたりが引退の時期だとされています。

犬の十歳といえば、人間の還暦にあたります。

まだまだ若い盲導犬ですが、少し早めに引退します。

パートナーと別れた後は、残りの余生を引退犬ボランティアの家庭や盲導犬育成施設で過ごします。

 

以前、友人がこんなことを言ったのを覚えています。

「盲導犬って偉いよね。道を覚えていて、家まで連れていってくれるんだから」と。

盲導犬の学習能力の高さには、驚かされますね。

でも、残念ながらナビにはなれないんです。

あくまでもパートナーの安全をサポートする身なので、時には道に迷うことだってあります。

そんな時、そっと声をかけて手助けできるのが、私たちではないかと思います。



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